二星



「二星適逢 未叙別緒依々之恨 五更将明 頻驚涼風颯々之声」

ニ星たまたま逢へり 未だ別諸依々の恨を叙べざるに
五夜まさに明けなんとす
頻りに涼風颯々の声に驚く

すいこよみ〜すいこばなし2013で描かせて頂きました。
構図はもしかしなくとも尾形光琳の『紅白梅図屏風』のオマージュです。
二星じせいというのは牽牛星(彦星)と織女星(織姫)のこと。先述の歌は小野美材おののよしきの歌で、雅楽の歌物の一つにもなっています。
7月の担当ですので、彦星を宋江、織姫を九天玄女になぞらえてみました。

宋江は梁山泊のメンツの中でも浮世離れた人だと思ってます。それこそ公孫勝も顔負けの。
金離れが良いとか女欲がないとかってあたりも充分人間味にかけていると思いますが、最たるものが理想主義も良いとこな朝廷への妄信っぷりだと思います。
そんなこんなで私は宋江を他の好漢と一緒に描くよりも九天玄女と一緒に描く方がしっくりくるのだと思います。
人の中にありながら、夢幻の中で生きる人。おそらくそれが私の宋江像です。

画面下の船はお月様です。七夕の頃の月は上弦の月なので船になぞらえることが多いとか。
また、七夕に雨が降ると織姫と彦星は逢うことが出来ないことからこの頃の雨を「催涙雨」と呼ぶらしく、これも画面上部の武器の群れとして描いてみました。

宋江のそばにいる牛は李逵、弓矢は花栄、巻物は呉用のつもり。
更に言うと、武器の群れは方臘戦で死んだ好漢達、月の船は水滸後伝で梁山泊から遠くシャムへと旅だった李俊達を表したつもりです。
宋江は彼らや方臘戦戦死者達を九天玄女のもと=天へ連れて行ってしまい、宋江の呪縛から逃れた李俊達は新天地へ船出した、というストーリーを込めています。
船の下に北斗七星があるのはアレです。北斗七星=晁蓋ら北斗党=梁山泊設立当初の志みたいな……。